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友達(大・カ)

何故か恒例になってたけど、SSだから絵なくてもいいんじゃんね!
えっと、アナとカメラマンです。ぐだぐだ長いです。
カメラマンはてきとうに、中西という名前になりました。
ほんとぐだぐだ・・・でも暗くない(T▽T)!



人から視線を浴びるのは決して嫌いではない。寧ろ大好きだ。
だから俺は、アナウンサーという仕事をしている。

ちょっと親の紹介があったけど、
ここでは自分の実力でやってきたと信じてる。
周りにどう言われているかは知っている。
けどアナウンサーって知的なイメージだし、
芸能人みたいに特別突出して優れた部分が無くても、
お堅い業界内で愛嬌あるキャラならすぐ人気者になれるし
色んな分野の芸能人との知り合いも出来てなんかイイだろ?


そんな気持ちでアナウンサーになった。

そんな 中途半端な



「・・・・・・・」

「あれは・・あのアナウンサーか」


警察の奴らがざわついているのが解る。
今まで人前で、こんな風に惨めな気分になった事なんてなかった。
でも、そんな事考えてる場合じゃない。
早く帰えらねえと、俺のせいで誰かが殺されるかもしれない。


「あ・・・あの・・・」


さっきのチビ達の”犬の散歩”のせいか、警察の動きが鈍い。
意を決して、前を向く。パトカーの赤い光が目に痛い。


「カメラマンを連れて来いと言われた。
 ちゃんと用意してあるんだろうな?」
「・・・あ、ああ」


警察官が視線で促したので、そちらを見ると
そこには良く知る顔が居た。


「おっ、大泉!」
「あ・・・」


目があった途端、中西は警官が数人付いてくるのも気にせずに駆け寄ってきた。
その顔は酷く頼りなくて、眉毛なんてハの字になってて
そんなマヌケ面見てたら、体の力が抜けた気がした。良い意味で。


「お前大丈夫なのか?」
「大丈夫なわけないだろ。警察がノロマなおかげでな!」
「・・・すまない、こちらも全力を・・・」
「んなこたどーでもいいんだよ!
 すまないと思ってるんだったら、何より人質の事を考えてるんだったら!!
 早く、助けてくれ。俺たちの気が狂っちまう前にな。」


言葉を失う警察官達を尻目に、俺はまだ情けない面してる中西の腕を掴むと
「10分以内に戻らないといけないんで」とだけ言って校舎の中に入っていった。
あの教室から少しでも長く離れていたかったという気持ちもあったけど、
素っ裸であんな人数の視線を一身に浴びてると思うと居た堪れなかった。


「大泉・・・」
「・・・・・・・」
「お、お前さ」
「なんだよ」
「・・・いや・・・だから言ったじゃないか。無茶はよせって!」
「ああ。今じゃ心底、お前の言うこと聞いてりゃよかったと思うよ。
 もう後の祭りだけどな」
「・・・・・ごめん」
「何でお前が謝るんだよ」
「いや・・」


中西は俺を見ては目を逸らし、見ては逸らしを繰り返す。
そりゃそうだ。相手が素っ裸じゃ、目のやりどころに困るだろう。
そういう問題じゃねえか。


「お前、自分からカメラマン名乗り出たのか?」
「え、ああ、もちろん」
「何でだよ」
「何でって・・お前一人置いてけるわけないだろう」
「そりゃそうだよな。俺一人置いて逃げるなんて局と親父が許さねえし
 そーなりゃクビは決定だし。その前に俺がぶっ飛ばすけどな」
「そ、そんな理由じゃ・・・!」


足を止めて振り返ると、睨むように俺を見据える中西と目が合った。
今度は俺が、目を逸らす。

わかってる。こいつは俺を、ちゃんと見てくれている。
大泉の子という理由じゃなくて、ちゃんと俺を見て、俺を心配してくれている。

ちら、と様子を伺うと、情けなくも怒ってもいない、いつもの中西に戻っていた。
どうやら俺の性格というものを、こいつはわかってくれているらしい。
いつもの調子でぽんと肩に手を置いて、笑った。


「お前どーこーじゃなくても、そもそも人として見捨てちゃダメだろ」
「・・・そうだな・・・」
「大丈夫。これから俺が撮る映像を見たら、警察も動くさ。
 大丈夫だよ、すぐに助かる。いつものクールでお調子者なお前はどうした?」


涙が出そうになった。
畜生。こいつに泣かされてたまるか。俺のプライドが許さない。


「ばかやろ・・」
「ん?」
「なんで、カメラマン名乗り出たんだよ・・・」
「いや、だって」
「お前まで人質になっちまったらどうすんだよ!!
 俺なんか放っておいて逃げればよかったんだ!!」
「お、大泉・・・」
「あんな・・あんな地獄に、お前を巻き込むわけにはいかない。」
「でもテレビカメラを連れてくるのが犯人の要求なんだろ?」
「・・・・・・・」
「驚きだな、お前が俺の心配してくれるのか」
「ひ、人として、当然だろ」
「そうだな」


結局、階段まで来てしまった。あの教室へは、あと10mも無い。


「いいか。絶対に、余計な事は言うなよ」
「わかってるよ」
「俺は余計な事言って人質になっちまったんだ。
 だから、絶対に、奴を怒らせるような変な事言うんじゃねえぞ」
「わかってるってお前じゃないんだから大丈夫だっつの!」
「おまっ・・・まあ、そうだな。お前なら大丈夫か」


あの教室まであと少し。
なのに、こいつの顔を見ると、何故か心が落ち着いた。
頼もしく微笑む中西と、仕事が上手くいった時の様に
ゴツンと拳と拳をぶつけると、意を決して廊下を曲がった。


「この先は、地獄だ」
「ああ」
「驚くぜ」
「ああ」
「・・・・開けるぞ」


中途半端な気持ちでなったアナウンサー
最初は、飽きたらいつでも辞めようとも思ってた。

でも最近、違うんだ。
もっと上へ行きたいと思うようになった。
こんなタレントかぶれなアナウンサーじゃない。
報道へ行きたいと。
事件の真相に迫り、人々の記憶に残るような報道をしたいと
それが、自分の実力をもっと世に見せ付けたいがためなのか、
そうじゃないのかは、また確かじゃない。

いや、確かじゃなかった。


今、俺は思う


俺の報道で、事件をより詳しく、より多くの人々に伝えられたら
その人が真剣に物事を考え、芽を咲かせるための種になれたら
俺の言葉一言で世界が平和になればいいとか、そんな大層な事は考えねえけど
少しでも救われる人がいれば


「・・・・・・」


ドアに手をかける。気分が重くなる。
大丈夫だとは思うが、まさか10分経ってないだろうか。
もう誰か殺されたりしてないだろうか。
・・・・は、すげえな
最初は自分が助かればいいとさえ思ってたのに、
いつの間にか、今日初めて会った奴らの事まで心配してやがる

とにかく、今はこいつを無事に帰す事だけ考えよう。


報道で人を救うだとか考える前に、大切な友達の一人くらいは守っておかねえとな



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アナってなかなか難しかった・・・
とにかく、カメラマン萌えと言いたかったのです。

2006.08.28 | Comments(0) | SS

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