解悟(岡高)
絵を描いた後にあてずっぽでSS書いたら、その絵が全く似合わなくなることってよくありますよね^^^^^^!え?ない?
小さな子が誘拐・暴行された事件の話なので、双子が誘拐された時のあれを見て耐えられなかった人はご注意くださいね。2、3行くらいですが。
一応岡高です。
ソドムキングEND後なのですが、姫と王子が転校したことになっちゃったエヘヘ。まあそこらへんはなあなあで。
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「こんなところにいたのか」
人気の無い警察署裏の生垣に、隠れるようにして座っていた高浦に岡田が話しかける。
「隣に座っても?」
その言葉に、ようやく反応を見せ振り向いた高浦の表情は暗かった。
「松島が怖がっていた。抵抗すればお前に殺されるかと思ったと。」
「・・・殺される?」
眉間に皺が寄り、一枚の写真を持つ手がわなわなと震えだす。
その声は怒りに満ち、岡田さえぞっとするような響きを持っていた。
「何を馬鹿な!!自分は少女を嬲り殺しておいて、殺されるかと思っただと!?」
血管を浮き立たせ顔を真っ赤にして怒る高浦に岡田は何も言えない。
事情聴取でその発言に居合わせた者は誰もが高浦と同じ思いだっただろう。
一人の若い刑事が、今の高浦と全く同じ事を言っていた。
二週間前。
1人の少女が失踪し、5日後県内の雑木林で発見された。
服は着ておらず内股は血に染まり、心臓にはナイフが突き立てられた無残な姿で。
8歳になったばかりの、可愛らしい少女だった。
A県警にとって、例の事件以来の大きな事件であった。
何百人という警察官が総出で犯人捜索にあたる最中、
警察を嘲笑うかのように、第二の誘拐事件が起こる。
一人目の被害者、真璃ちゃんの死体が発見されてから4日後の事で
誘拐されたのは7歳になる本田碧ちゃん。男の子だった。
捜査の甲斐あり、犯人と思わしき学生宅に捜査一課が訪問したのが昨日の正午。
拒否する学生を押し切って家宅捜索を行い、2階にある部屋の押入れで
誘拐されていた碧ちゃんを発見、逃げ出そうとした学生を高浦が取り押さえ即現行犯逮捕。
発見時碧ちゃんは真璃ちゃん同様服を着ておらず、
性的暴行を受け衰弱しきっており、すぐに病院へ送られ救出された。
犯人の名前は松島要一。
19歳の学生で、両親は海外出張の為長期間留守だった。
家を調べている中で真璃ちゃんの髪の毛、下着を発見。
真璃ちゃん殺害の件で再逮捕となった。
「松島が逃げようとして取り押さえた時に、何か言ったのか?」
「・・・特に何も。ただ睨んだだけです。本当は思い切り殴ってやりたかった。」
「高浦」
「解ってます。そんなこと、口に出してもいけないんですよね」
言いつつも、納得なんて全くしていないのは表情を見れば解る。
高浦が握り締めた写真の中では、殺された真璃ちゃんが幸せそうに笑っていた。
「高浦、その・・・上手くいえないが、松島を捕まえたことで
少しは彼女達の無念を晴らすことができた。そう思うしかない。」
高浦は黙ったまま写真を見つめる。
「忘れろとは言わない。ただ、いつまでも引きずっている訳にはいけないだろう。
こういった事件は何故かいつまでもなくならない。次から次へと起こる。
それを少しでも食い止めるのが我々の―」
「岡田さん、知っていましたか」
思いがけない突然の高浦の言葉に、岡田の話は遮られる。
しかし岡田は咎めず、先を促した。
「22年前、青田を助けたのは山崎さんだったそうです」
「・・・ああ、少しだが聞いている」
「山崎さんが言っていました。『起こってしまった事件を解決する事はできない』と。
俺はその時、よく解らなかったんですが」
「ああ」
怒りに満ちていた高浦の表情は段々と不安を帯びたそれに変わり、声も小さくなっていく。
岡田は聞き漏らさないよう、必要以上の相槌を打たず、じっと高浦を見つめ耳を澄ました。
「まだよく解っていないんですが・・・・・この、真璃ちゃんが二度と
ご両親のもとに帰る事ができなくなってしまった事もそうですし・・・・
もっと・・・それだけじゃなくて・・・・・・・・」
上手く言葉にならないのか、口ごもる。
それでも岡田は何も言わずに待った。
「もちろん、死んでしまった事が良い事だと言うつもりはありません。
ただ、助けられた碧君は、この事を一生背負って生きていく。
きっと・・・忘れられない事だと思うんです。
それはもしかしたら、死ぬよりも辛い事かもしれない。」
高浦の顔色が悪くなっていく。
例の事件を思い出しているのは明らかだった。
そっと震える背中に手を添える。
「高浦。だが、死んでしまった彼女にもう未来は無い。
碧君はこれから楽しいこともあるだろうさ。きっと辛いことよりも沢山。
悔しいがそう願うしかないだろう」
「そう、なんですよね。私たちはもう願う事しかできない」
少々の沈黙の後、俯いていた高浦が顔を上げ、その目がしっかりと岡田の目を捉える。
「俺、怖くなったんです。暴行された碧君を見て、山崎さんの話に聞いた22年前の青田をだぶらせた。
怖いんです。もし、もしあの子がまた再び、青田のような事件を引き起こしてしまったら!
あの事件で俺と一緒に人質になった学生達の内、2人は転校したそうですがまだカウンセリングを受けている。
もう1年以上経ったのに、未だにあの事件の夢を見るんです!!・・・・・俺は・・・・・怖い」
青田は22年経った今も、あの事件を引きずっていた。
なら、俺はあと何年あの悪夢を見るんだろうか。
そして、碧君は。
「起きてしまった事件を解決する事はできない。
俺たちに出来ることは犯人を捕まえ、それ以上被害者が出ないようにするのが精一杯だ。
それでいいと思っていた。・・・・それしかできないんだと、思うようになってしまった。」
そこには
いつもの高浦茂はいなかった。
自分が今触れているのは、誰の背中なんだろう。
あの、いつも鉄砲玉のようにがむしゃらに走ってゆく
元気の良い青年はどこにいるのだろう。
「なら辞めるか。刑事を」
「・・・・・いえ・・・・・いえ」
高浦の目からぼとぼとと大粒の涙が零れる。
「俺、やめたくないです」
次から次へと溢れる涙に、高浦のワイシャツの袖がびしょびしょに濡れていく。
ずっと我慢していたのだろうか。
あの事件以来
高浦はこうして、泣いたことがあったのだろうか。
「生きている限り、時間なんて沢山ある。
考えよう高浦。私も一緒に考えるから」
背中を引き寄せ抱きしめる。
「(せめて今だけは、考えるのをやめていいんだ)」
声を必死に殺して泣き続ける高浦がひどく愛おしくなり、
岡田は高浦の体温を感じながら、ゆっくりと目を閉じた。
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前にも言った気がしましたが、真相編での高浦さんは、青田を通して山崎さんの言葉を考え、それでもひたむきに頑張る姿勢が見受けられましたが、人質コースだとどうなるんだろうなあと。
そういうのをSSで書こうと思ったんですがどう考えても失敗した気がします^q^
こういうの書くと、読んでる人に被害者・加害者と同じ名前の方がいたらどうしよう・・・とか考える。
2008.01.28 | Comments(0) | SS