かぜ(占・青)
風邪ひきました。
そんな中思いついた双子小説は風邪ネタでした。
風邪ネタなのにエロくないのが双子クオリティ。
アンソロ描けお前。
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目が覚めると、隣には
「いち」
「う、わあ!」
飛び起きた点野に驚いた顔をする目の前の男は、
点野が恐れてならない凶悪犯。
そして、生き別れの双子の兄だという、青田だった。
「な、なん、なんなんですか・・・」
そこまで言ったところで周りの違和感を覚える。
白い部屋、自分はベッドに寝ている。
「お前、農耕中に熱出して倒れたんだ。覚えてるか。」
「・・・いえ全然・・・貴方が連れてきてくれたんですか?」
「ああ・・お前の事は、俺に任せるのが一番だって
監視官の奴らも解ってきたんだろう」
「・・・・・・・」
なんということだ。
これからはこの恐ろしい犯人が、監視官公認で自分の側にいるなんて。
恐ろしい・・・
いや、本当は薄々解っているんだ。
この人は、弟の自分には優しいことを。
しかし・・・・
「あ、あの」
「なんだ。何か欲しいものでもあるのか?」
「手・・・」
「ああ」
青田の手が、点野の手を強く握っている。
それを注意したが、しかし手は離れない。
点野がもう一度注意しようと、口を開きかける。
「あの、すみません、手」
「昔」
「昔、まだ俺たちが小さい時だ。
お前が病気になった時、俺がずっと側にいてやった。
こうして手を握ってやると、お前は安心して眠るんだ。
そうだな・・母さん・・お前の母さんよりも、
俺が手を握ってやっていたほうが、嬉しそうな顔をしてくれたんだ」
とても穏やかな表情でそう言う青田は、確かに自分と似ていた。
いつも目をつり上がらせて話す相手を睨んでいるので、
男のこういった顔を見るのはとても珍しかった。
「あの、でも、私はもう大人ですし、
昔の事は・・・申し訳ないんですが・・・」
「覚えていないんだよな。・・そうだったな」
「すいません」
「お前が悪いわけじゃない」
その時、点野の頭に締め付けるような痛みが走る。
「一味!」
くらりと眩暈がして倒れようとした点野の肩を青田が寸でで掴み、
ゆっくりとベッドに倒してやった。
「もう少し寝ていろ」
「・・・は、い、すいません・・・」
「大丈夫だ。俺がずっと側にいてやる」
「・・・・・・・・」
嫌だ、と言うのは、青田に悪い気がした。
しかし、この歳になって、誰かに手を握ってもらいながら眠りにつくなんて
気持ち悪いし落ち着かないし怖いし何だし。
ああ頭を撫でないで
頭を
頭が・・・
* * *
「・・・兄ちゃん?」
「いちか?」
「うん」
ニコリと笑う一味に、青田もにこりと微笑み返した。
「兄ちゃん、ずーっと手を握っててくれたんだよね」
「ああ」
「本当に、一緒なんだね」
「ああ、ずっと一緒だ」
「えへへ 嬉しいな」
青田が頭を撫でてやると、心底嬉しそうな顔をして
自らその大きな手に頭をすり寄せる。
「兄ちゃん、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
目を閉じてすうっと大きく息を吸うと、小さく呼吸して直ぐに眠りに付く。
熱を持った手が熱い。暖かい。
あの日と変わらない、一味の手の温もりが。
「お前の手を握ってる時は・・俺が一番安心しているんだ」
手を握り返し、両手全体でその熱を感じる。
祈るような姿にも見えるような仕草でその手を口元に持っていくと、
唇に触れる寸前で止めて、ゆっくりと瞼を閉じた。
ああ 自分は ここにいる。
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双子は、一つ一つの行動に底知れない感情が有りすぎて伝え切れません。
点野先生はしばらくお兄ちゃんにおびえているといい。萌え!
ていうかこの点野先生「西洋骨董洋菓子店」の魔性に見えるよー
ぼうずむずかしいぼうず。いいからアンソロ描け。
2006.10.30 | Comments(0) | SS