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ホワイトデー・キッス(大高大)

多くは語るまい。アナ高アナです!


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「高浦さん、来てるー?」


まるでおやつを楽しみにしている子供のように、
バタバタと騒がしく靴を脱ぐ音と声が玄関から響く。
その声は、さすがにアナウンサーというべきか、良い声で。
高浦はそんな大泉の声を気に入っていた。

しかし、彼を出迎えるその顔は決して喜んではいない。


「おかえりなさい。」

「良かった良かった、ちゃんと来てた。」

「留守電で「カギ開けっ放しだから」とか言われたら、
 来ないわけにはいかないでしょう?無用心にも程が」

「まーまー部外者は自動ドア開かなくて入れないんだから大丈夫でしょー。
 高浦さんは顔パスだっただろ?俺管理人さんとも仲良しだから。」

「う、ううん・・・」


確かに、管理人のおばさんは高浦が自動ドアの前で立ち往生していると
「あらアナタ大泉さんの!聞いてますよ!」と、嬉しそうにドアを開けてくれた。
一体「大泉さんの」何と伝えたのか解らないが・・・

だが、今日という日に半ば無理矢理家に呼んだということは、
大泉さんは自分の事を、友人以上くらいには思っているんだろうか。
それは嬉しいような、複雑なところではある。

事件後、退院した後にも連絡を取る事があり、何度か会っている内に
こうして大泉さんのマンションを気軽に尋ねるような仲になったのだが、
大泉さんの冗談のような「高浦さん俺の奥さんにならない?」だとか
「今日泊まってく?え、俺夜這っちゃっていい?」だとかいう言葉に
だんだんと妙な期待を持ってしまっている自分に気づいてからと言うもの、
なんだか(一方的に)気まずくなってしまい、2週程全く会わない日が続いた。

そこにこの誘い。しかも、自分の誕生日にだ。
同姓相手に、色めいた感情を抱いている自分が嫌だった。


「と、ところで、今日は何の用なんですか?」

「へ?いや別に、朝からなんとなく高浦さんに会いたかったから。」

「なんとなく?」

「ああ。だから俺今日は、家に帰ったら高浦さんちゃんと居るかなって
 どきどきしてたんですよ!」

「そ、そうですか・・・」


少々拍子抜けといえば、拍子抜けだった。
まあ今日が自分の誕生日だと教えた事もないし、知っている訳もないのだから
当たり前といえば当たり前なのだ。期待する方がおかしい。
この件については、忘れよう。


「今日も仕事疲れたでしょう。今ご飯をー・・」

「あ、そうそう!」


台所へ行こうとした時、大泉さんが何かを思いついたように鞄の中を引っ掻き回す。
心臓が跳ね上がった。ま、まさか!!


「今日ホワイトデーだっただろ。お返し余ったからあげるよコレ。
 バレンタインに何も渡してないのに、俺から貰えるなんて凄い事なんだぜえ?
 あ、高浦さんって甘いもの苦手だったっけ?」

ニヤニヤしながら、なにやら高級そうな包みを差し出す。

「・・・・・・・・・!!!!」

「え、な、なに?何その反応」

「なんでもありません!ありがとう、ございます。」


誕生日については1度きっぱりと諦めたはずなのに、
物凄い期待を抱いてしまった自分が恥ずかしくて、首まで赤くなる。
しかもそれが余り物のお菓子とは・・・・・


「ねえ、なんでそんな赤くなってんの?
 俺からのプレゼントそんなに嬉しかった?ねえ、高浦さん。
 ・・・なんか余りもので申し訳ないくらい喜んでる!?」

「べ、別にそういうわけじゃありません。」

「まあ、確かに喜んでるって顔じゃないけど、そんな顔真っ赤にして・・・
 何かあるでしょう。言ってくださいよー気になるじゃないかよー」


首に腕を回され、ぐらぐらと体を揺らされる。
まさか言えるわけが無いので、話を逸らすために
手渡された包みを、わざとらしく「なにかなー」なんて言いながら開けてみると。


「マシュマロ?」

「そう!ホワイトデーといえば、マシュマロデー!まあキャンディーデーだとか
 色々あるけど、渡しながら『君の唇も、マシュマロみたいに柔らかいのかな?』
 な~んて言えば、大抵笑われるけどちょっとは本気にする女の子もー・・・
 あれっ、高浦さん、妬いちゃった?」

「な、何で俺が!」

「あ、今「俺」ってなった。高浦さんがタメ口聞いてくれると嬉しいなあ~」

「くっ・・・」


妬かなかったといえば嘘になる。大泉さんが女性にめっぽう弱いのは知っているし、
大泉さんに恋人ができれば自分のこの感情も一時の気の迷いだったと、
諦めがつくかもしれないという、保守的な気持ちがあるのだ。


「高浦さん」

「な、なんだ」

「あんた今日誕生日だったのか」

「・・・・・え!?」


振り向くと、いつの間にか警察手帳が胸ポケットから大泉さんの手へと移動していた。
生年月日をまじまじと見つめる大泉さんの表情から笑顔が消え、
首に回した腕に力がこもったのを感じた。


「何で言わないんだよ」

「言う必要も、無いだろう・・・」

「俺と高浦さんの仲だろー?」


いつもの調子で冗談を言う。
冗談。
これは、冗談なんだろうか。



「・・・・・その」



「その、仲というのは、どのくらいのものなんだ?」



体が密着した状態で、耳のすぐ横には大泉さんの顔がある。
「しまった」と思った。言ってしまった後、すぐに後悔した。
今の顔だけは大泉さんには見せられない。ましてや、こんな近くでなんて。

ひたすら伏せている目線の先には、マシュマロの袋。
すっと、形の良い手が伸びてきた。


「知りたい?」


耳に息を吹きかけるようにいつもよりもずっと低い、大人の男の声でそう言われ、
体に電気が走ったような感覚が先か、唇に柔らかいマシュマロがあてがわれたのが先か。

次の瞬間には、マシュマロを挟んで口付けをされていた。


高浦が動けないでいると舌で唇をつつかれ、少しだけ口を開くとその隙間にマシュマロが滑り、
次いで大泉の舌が、マシュマロを高浦の口の中に押し込むようにして割り入ってくる。
2人の舌の間で転がされ、粉っぽかったマシュマロの表面は滑らかになり、2人の熱を受けて
まるでもう1つ柔らかい舌が絡まっているかのような感覚さえ覚えた。
慣れていない高浦はそう言われたわけでもないのに、マシュマロの形を崩さないよう
優しく舐めるように舌を交わした。菓子の甘さを感じたと思うと大泉に舌を絡め取られる。


「おお・・・いうみ・・・はっ・・・・」

「んんー・・んっ、は」


唇が離れると、ねっとりと糸を引いた唾液がマシュマロの白に染まっていて、
別の液体を彷彿としてしまい恥ずかしさが倍増した。
息が上がっている。マシュマロは、高浦の口の中に残った。


「解ったかよ。」

「・・・?」

「俺との仲」

「・・・・いつの間に、こんな仲になっていたんだっ・・・・」


少し勿体無く思いながら、口の中でマシュマロを潰す。
高浦の喉仏が動いたのを確認したのを見て、大泉がニヤリと笑った。


「今、かな」

「はは」

「怒ってない?」

「・・・・・・いや」


抱きかかえられていなければ、飛び上がりたい程嬉しかった。
こんなに、こいつの事が好きだったなんて。
今この瞬間だけは、男同士の恋がどうかなんて事は考えない事にした。


「余り物のマシュマロ。うん。最高の誕生日プレゼントだ。」

「どっちかっていうと俺の方がメインじゃない?」

「言ってろ」



先ほどの雰囲気なんてどこへやら、今は大声で笑い合えるのが嬉しかった。
恋人のように愛し合うのは、きっと心のどこかでは望んでいた事だったのだけど、
あんな恥ずかしい行為はいくら経っても慣れそうなものではない。

・・・・そういえば、すっかり忘れていたけれど、


俺は甘いものは苦手のはずだったんだ。



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高浦さんが甘いもの苦手かどうかは定かではありませんが(殴)
人質達的には男同士でエロエロした行為をするのはやっぱトラウマなのかなー。でもチュウだけは1回もしてなかったから、きっと平気だろう。うん。な!(聞かれても)

アナ高アナはもっと書きたい事いっぱいあるのです!でもそれはまた今度。
TSTまだまだ続くよ!

2007.03.14 | Comments(0) | お誕生日

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