誕生会・後(警察)
昨日の前編の続きですが、前編読んでなくても話は通じますー。
ほんのちょっぴり岡高です!
TSTも終盤ですよーー!!うわーーーーん!!!!
とりあえずこの絵は、夢見すぎだと思う。もう別人じゃねーかwwww高浦さんはもっと男らしくあるべきだよ!そしてかわいいよな!!(・・・)
-------------------------------------
PM10時。
パタン、と帳簿の閉じる音に、書類を書いていた高浦がぱっと顔を上げる。
窓際のデスクに座っていた山崎が立ち上がったのを見て、慌てた。
「あれ、山崎さん、帰っちゃうんですか?」
「おお。お先に失礼するぞ」
「・・・あの、今日、覚えてませんか?」
言おうか言うまいか、山崎から宙へと視線をきょろきょろ動かした後
高浦は遠慮がちに尋ねた。
「お前の誕生日だろ?」
「山崎さん、去年までは毎年一緒に飲みに行ってくれたのに」
高浦には珍しい、拗ねたような口調で笑うと
山崎は何も入っていない皮の鞄を持ち、薄手のコートに袖を通しながら高浦に近付いてきた。
その先には、出入り口がある。
「お前もいい歳なんだから、俺みたいなしょっぱい年寄りと毎年誕生日過ごさずに
1回くらい可愛い恋人とでも一緒に過ごしたらどうだ?誰か良い人いないのか」
「そんな人がいたら、今ここで残業なんてしていませんよ」
「だよなあ。でもな。」
山崎の目線がドアへと投げかけられる。
「今年は俺が祝わなくても、
お前を待ってる奴がいるんだよ。」
「え?」
促されるように高浦もそちらに目をやると。
「岡田さん・・・?」
「あ・・・・お疲れ様です」
「お疲れさん」
山崎が、「そういうことだ」と高浦の頭を2、3度、ぽんぽんと優しく叩いた。
「岡田警部、あいつに久しぶりに楽しい誕生日をプレゼントしてやってくれよ。」
「はい・・・」
年上の部下の気遣いに苦笑しながら、すれ違い様に頭を下げる。
広い部屋には、岡田と高浦の2人になった。
「あの・・・待ってるって・・・?」
「・・・・・・・・それは、言えない。」
何故なら、高浦を待っているのはサプライズパーティーだからだ。
ここで何があるのかを先に高浦に言ってしまっては台無しになる。
本来ならばとっくに部屋に戻っている時間のはずなのに、
いくらクラッカーを用意して待っていても来ない高浦に
一宮、二村、三島の3人の部下達が痺れを切らしたのを見て、
岡田は「忘れ物をしたのを思い出した」と言って出てきたのだ。
彼らも、ずっと上司と一緒に居るのも疲れるだろう。
「・・・待っててくれたんですか」
「え?」
「岡田さん、俺の誕生日祝ってくれようと、待っていてくれたんですか・・・」
「いや、その」
「・・・・ありがとうございます」
高浦の頬が緩んでいく。
いつもの溌剌とした笑顔ではなく、柔らかな、はにかむような笑顔がそこにあった。
「すごく、嬉しいです。」
「・・・・・・・・・」
今まで、目の前の相手に対して感じたことが無いような空気が流れる。
穏やかで何故か照れくさく、相手から目が逸らせない。
この空気には、見覚えがあった。近頃すっかりご無沙汰だったが。
それに、高浦のこんな笑顔を見るのは初めてだった。
何故か高浦の部屋で待つ皆に申し訳ない気分になった。
高浦を待っているのはみんななのに、今この高浦の笑顔は、自分だけに向けられている。
「じゃあ行きましょうか!」
「あ、行くって、どこへ!?」
「もちろん飲みにですよ!家族以外で、誕生日に自分の帰りを待っていてくれる人が
いるなんて初めてなんです。どこへ行きます?今日は俺がおごりますから!」
「誕生日におごる奴がいるか・・いや、そうじゃなくて」
いそいそと帰り支度をし、いざ飲み屋へ!という姿勢の高浦を制止するように
岡田の大きな手が高浦の手首を掴んだ。きょとんとした顔が振り向く。
飲み屋なんてとんでもない。どうにかして高浦の部屋へ行かなければ。
「今日はお前の部屋に行きたい!」
「え・・・・・・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?
「っ違う!!別に深い意味は無くて、だな!」
「あ、ああー、別に大丈夫ですよ。じゃあビールでも買って帰りますか」
「いや、ビールも必要ない。」(もう山ほど買ってあるし)
「え?」
「あーーーいや、うん、買って行こう。そうだな。」
「岡田さん今日どうかしたんですか?」
「・・・なんでもない。」
岡田は呼吸を整えた。自分は何を言っているんだか。
部屋に行きたいなんて、男相手に深い意味も何もないだろうに。
・・・いい大人が誕生日を祝うのに酒も飲まないなんて、
じゃあ部屋で何をする気だっていう話だ。プロポーズでもする気か。
独身寮まで歩いて10分程度。少しコンビニに寄り道して20分。
3月も半ばだというのに、夜の帰り道はまだ冷めたかった。
未だに、何故か火照っている頬を冷やしてゆく。
「岡田さん・・・」
「ん?」
「もう、大丈夫ですよね」
「何がー・・・」
高浦の横顔に、岡田はこれ以上の言葉を発せなかった。
強張ったその表情は、最近はもう見ることは無かったが
半年以上前に、よく見たものだった。
あの事件を思い出し、周りを気にしているのに、それを隠すような。
「皆すっかり忘れているよ。」
「本当にそうでしょうか・・・・」
実際は、まだ風化しきっているわけでもないかもしれない。
幸いあの事件のせいで高浦の事を嫌った奴は誰1人居なかったが、
高浦に対して未だに罪悪感を抱いている者、
あの事件の事を忘れようと必死になって、逆に気にしてしまっている者・・・
そして、あれが何かのきっかけになってしまった者もいる気がする。
自分は、どれなんだろう。
「今日の誕生日会は二村がお前から誕生日を聞いた時に、お前と約束したから
開くものであって、お前を無理に気遣っているとかそういう意味は無いからな。」
「え?誕生日会?」
「・・・・・・・あっ・・・・・・」
しまった、と額を押さえた岡田を見て、高浦が笑う。
「そういう事ですか。」
「・・・すまんが、今のは無かった事にしてくれないか。」
「そうします。」
それから少しの間沈黙があった。
「あの頃は」
突然の高浦の切り出しに、少し前を歩く高浦の後姿をぼおっと見ていた岡田が我に返る。
「あの頃は、みんなが自分の為に何かしてくれる度に、
ああ、気を使われているのかな、って思っていまたし、それが嫌でした。
皆があの事件での事で俺を哀れんだり、引け目を感じているんだと。
自分から飛び込んで行った事だからあの時の選択に後悔はありませんでしたが、
ただ一つ、皆にまで迷惑をかけてしまった事だけは、本当に申し訳なく思っていました。
・・・・一番気にしていたのは、もしかしたら自分かもしれない。」
「・・・・・・・」
「でも、それはもうやめます。
今日からきっぱりと、人の好意は純粋に好意として受け止めます。」
「そうか。」
そうは言っているが、先ほど高浦が自分に見せた笑顔はもう、
人の好意を疑っているような人間のできる笑顔ではなかった。
自分はそれほど高浦に信用してもらっているという事だろうか。
岡田の心がじわりと暖かくなった。
嬉しかった。それは、部下に心から信頼してもらっているという嬉しさからだろうか。
それとも、自分でも気付いていない別の何かがあるのだろうか?
「さあ、今日は飲むぞーー!」
「明日も朝は早いんだぞ。ハメを外しすぎるなよ。」
「はい、わかっています。誕生日会なんて、何年ぶりかなあ」
こんな風に、子供のように喜ぶ高浦を見るのも初めてだった。
今日は高浦の色々な表情を知ることができたなあと、岡田は密かにほくそ笑む。
そしてふと我に返り、笑顔は消え、目を瞑った。
(・・・・・・別にそれが、なんだというのだ。)
岡田は自分の気持ちに気付かないふりを続けるあまり、
無意識に自分の気持ちに気付かないように"思い込む"ようになっていた。
「もうこんな時間だ。少し急ぎましょう、岡田さん!」
「ああ。」
そういえば、クラッカーのスタンバイを知らせるために
寮の前に来たら電話をかける約束をしていた。
しかし、岡田がそれを思い出した時にはもう高浦の部屋の前で。
ドアが開いた瞬間、慌てふためく同僚3人の姿に、
岡田と2人で寮中に響くほどの大笑いしたことも、
高浦にとっては素晴らしい誕生日の思い出となった。
『高浦、ハッピーバースデーー!!』
-------------------------------------
ぐだぐだぐだぐだした恋愛大好きなんです(殴)
次の更新でTSTプロジェクト最後ですよードキドキ!
2007.03.14 | Comments(0) | お誕生日
![](http://file.tadaima.blog.shinobi.jp/line_dot.gif)