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宝の地図(点野)



くーるびーの、高校生の双子のSSのため、めっちゃくちゃ書き直したものですw
引っ越すよなあ・・普通引っ越すよなあ・・・!

あと、なんで点野先生が、ずうっとおにいちゃんの事知らなかったのかすごい謎です!くるびのSSじゃあ隠してるふうじゃなかったのにね!

というわけで、色々疑問が残る中、中学時代の点野先生のお話です。
でへへかわいかったんだろうなあでへへ(きもい)


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『じゃあぼくはこれ入れるね』

『じゃあ、ぼくもこれ入れる』

『マネするなよいち~』

『だって、にいちゃんがもってないものを
 ボクだけもっててもつまんないもん。
 にいちゃんのマネしちゃだめ?』

『・・・いいよ。じゃあ、ボクもいちとおなじじものいれるね。』



『おっきくなったら、いっしょにあけようね、宝箱!』






時は経ち、中学生になる年の春の事。

ランドセルをしまおうと思い、ずっと押入れの奥の一画を占領していた
小さかった頃のおもちゃを捨てるため、埃だらけの押入れに頭を突っ込んだ。
独特の埃臭さを、一味は口の中にオレンジの飴でかき消した。

結構大きいと思っていた段ボールの箱は、今抱えてみると思いのほか小さくて
ひっくり返してみると、プラスチックのスコップやらバケツやら訳の解らないおもちゃが、
散らかった部屋にぶちまけられて更に部屋を汚す。

自分はそんなに気にならないけど、またお母さんに怒られるなーと、
思うだけ思って、反省なんてしていない。

ここにあるものは小学校の低学年まで使ったものだけど、あまり馴染みを感じない。
幼稚園児の頃にこれらを使った記憶はすっかりなくなっていた。
本当に自分は、忘れっぽいなあ。


「ん、なんだろうこの箱」


手のひらに収まるくらいの青い箱。
りんごやみかんの、紙製のシールがベッタベタと汚いくらいに貼ってあった。
振ってみると中からかさこそ音がする。「紙が入っているのかな?」
弱弱しいおもちゃの錠前は、少し力を入れたらすぐに壊れた。


「・・・地図かな、これ」


ぐちゃぐちゃの文字と絵でいまいちわからない。しかし、鳥居(らしきもの)や
病院(らしき十字マーク)、家のマークに、十字路と「こうえん」。
これには心当たりがある。心当たりも何も、今住んでいるこの町の地図だ。
わかりにくいけど・・・なんとか、がんばれば、わかる。
どうやらこれは、公園の滑り台の下に埋めたものを示す地図らしい。

と、いうことは。


「宝の地図だ!」


描いた記憶も埋めた記憶も全く無い。
懐かしさは全くなかったけれど、別の嬉しさがこみ上げてきた。
小さな頃の僕は何を埋めたんだろう?思うが先か、プラスチックのスコップを持って飛び出した。

僕はこんなに行動力のある子供だっけ?別に明日でもいいじゃないか。

でも、なんだか、今すぐに


(今すぐに、見てみたい!)



結局公園に辿り着いたのは夕方の7時過ぎで、
遊具の少ない公園には、すっかり子供達の影はなくなっていた。
小さな砂場と塗装の剥げたブランコと低い鉄棒。そして、スチールがべこべこの滑り台。
地図には「すべりだいのすべったところの うらにある」と書いてある。
滑り台を見渡してから、首をひねって考えた。すべったところ・・・


「あ、ここかな。」


滑り台の端っこの裏。しゃがみ込んで覗いてみると、
その三角ゾーンは少し雑草の伸びが悪い気がした。きっとここだ!
スコップを刺してみる。しかし砂場用の丸いスコップでは思ったよりも掘れなくて、
ガシガシと削るように掘り進めた。小さい頃もこうしたんだろうか。


10cmほど掘ったあたりで、それらしき物の頭が見えてくる。
さらに掘り進めると、その形がわかってきた。
引き出物か何かで貰ったのか、少し高級そうなクッキーの写真がある小さな缶。
大分その姿が見えてきたら、手で掴んで力を入れながら動かすと、ボコッと抜けた。
その拍子にしりもちをついてしまい、少し顔を赤くしながら周りを見渡した。


「・・・さて、中身は、と・・・」


少し錆び付いた缶の蓋を苦労して開けた。
中身はこれまた小さなおもちゃばっかりで、少し拍子抜けする。
これじゃああのおもちゃ箱の中にあった物とそう変わらない。


「宝の地図、か」


半笑いを浮かべながら、缶をひっくり返し、これまた中身をぶちまける。
子供はこんなものを大事に埋めるんだから、僕にはわからないな。
そんな事を考えている自分自身まだ子供だったが、中学に上がるというだけでずいぶんと
大人になった気がしていた。全く懐かしさを感じないおもちゃを適当に弄る。

ふ、と、気が付いた。


「なんで、どれも2つずつなんだろう?」


メンコ
プロ野球カード
大きなビー玉
よくわからないキャラクターの小さな人形。

全く同じものが2つずつ。
誰か友達と一緒に埋めたんだろうか。それにしたって、別のものを埋めるだろうに。
おそろいの物を一緒に埋めた?それならおそろいにした意味がないじゃないか。
プロ野球カードをひっくりかえすと、名前が書いてあった。
一つには、いちみ。僕の名前だ。
もう一つは・・・・



「せい、じ?」



また、首をひねって、考える。
目を閉じて、頭を駆け巡らせる。
・・・・思い出せない。
幼稚園の時の友達なんだろうか。
小学校にはそんな名前の友達いなかった。




母さんのカミナリを覚悟しつつ、こっそりとドアを開けると、
そこにはやはり、頭に角を生やした母さんが待ち構えていた。


「ただいまあ」

「一味!アンタこんな夜遅くに突然出てって、どこ行ってたの!」

「ご、ごめんなさい・・・」

「しかも部屋も散らかしっぱなしで!いいかげん片付けないと全部捨てますからね!」

「や、やめてよ!今片付けるからあ!」

「先にお風呂入っちゃいなさい。泥だらけじゃないの!」


背中にお母さんの怒鳴り声を聞きながら、慌てて部屋に駆け込んでドアを閉めた。
ふうとため息をつきながら、「しまった」と顔を上げる。
「せいじ」くんの事を聞くのを忘れてしまった。

・・・でも、きっと、お母さんも忘れてるだろう。
僕が小さい時のものや、覚えの無いもの。色々あるけれど、
結局お母さんは「忘れちゃったわ」と言って、すぐ話を切ってしまう。
だから僕は、小さい頃の思い出話も全然聞いたことがない。

僕の物忘れの酷さは、きっとお母さんの遺伝なんだ。


「・・・・捨てちゃおっかな。」


誰だか解らない友達との宝箱・・しかも、中身はそこまで魅力的ではないものを、
いつまでも持っていても仕方ないと思った。
小さい頃の品をいつまでも大切にしようと思うほど、
中学生というのは昔を懐かしむ気持ちを持った大人ではない。

でも折角苦労して見つけたのだから、大きなビー玉だけ学習机に入れておいた。
オレンジ色のビー玉と、赤いビー玉。


「・・・片付けはお風呂入ってからにしよう。」


クッキーの缶の宝箱は、空の段ボールのおもちゃ箱に入れられて、
その上にはたくさんのガラクタや、プラスチックのスコップやバケツが重ねられ、
その週の木曜日に、ようやくゴミに出された。


幼き頃の思い出は、トラックで運ばれて行き
大きなビー玉も、いつの間にかどこかに行ってしまって

「せいじ」という名前も、3日もしない内に忘れてしまった。


それから僕は友達を作り、
人並みに悩み、喜び
恋をして、結婚して、離婚して


今日まで









『にいちゃん。このたからばこ、いつあけるの?』

『うーん、おっきくなったらね。』

『おっきくなったらって、いつ?』

『・・・おとなになったら!』

『ふふ、たのしみだね』

『うん!』




にいちゃん。


ぼくたちおとなになっても、ずっといっしょだよね。




2007.06.09 | Comments(0) | お誕生日

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