利用(ヒ・高)
ヒロシ×高浦です。
うちは高浦が総受けなんじゃなくて、
きっとヒロシ様が総攻めなんだと思います^^
つうか まじ 明るいの書きたい・・・!
このままではSAKKYに、暗いもの書きのレッテルが!!
「はい、もうだいぶ・・・」
『そうか。ならよかった。』
刑事さんから電話がかかってきたのは、退院して数日たった頃だった。
『お友達や先生はどうだい?』
「先生は、もうすぐ授業に復帰するそうです。姫原はあまり学校には来ていないみたいで、
部長は転校しちゃったんですけど、元気でやっていると・・・」
『そうか・・・やはり、元の通りというわけにはいかなかったんだね』
電話の向こうの声が、まるで全ての責任が自分にあると感じているような、重い響きを持つ。
僕は何故か慌てて、彼を元気づけなければと思った。
「あっ、あの、刑事さん」
『なんだい?』
「確かに警察は何をするにも遅かったですし、今でも「なんでもっと早く」って思います。
でもあなたは、少なくとも・・僕たちのために精一杯やってくれたと思います。
それを僕は、きっと一生忘れません。」
『君・・・』
照れているのだろうか、はにかんだ様子が受話器ごしに伝わってくる。
そして、少し申し訳なさそうに笑いながら
『こんな事、早く忘れた方がいい』
と言った。それは全くだ。
こんな事早く忘れたいと日々願っている程なのに、「忘れません」なんて。
「ふふ、そうですよね」
『とにかく、君が元気でやっているなら良かった。もし何か困った事があったら、いつでもこの電話にかけてくれ。』
刑事さんの言葉は僕と正反対で、ハキハキと頼もしいものだった。あの事件でも、
初めて会った時や2人で遊び道具を探しに行った時、これには何度も勇気付けられた。
「はい。ありがとうございます。・・・ええ。はい。・・それじゃあ。」
ピ、と、暗い部屋に電子音が響いて、通信が切れた。
「・・・・・・・ふぅ・・・・・」
こんな事をしている最中に電話がかかってくると、心臓に悪い。
しかもそれが・・あの事件の関係者なんて。
しかし、それでも萎えていなかった自分のそれを見て、複雑な気持ちになりながら
ヒロシは再び自慰を始めた。
「(あれから・・あの事件の時の事を考えると・・) っはぁ、はぁ」
トラウマとなり、恐怖の記憶となって脳内に深く刻まれているはずのあの事件は、
ヒロシにとって思わぬ後遺症を残していた。
「(やっぱり、手じゃダメだっ・・・!) んん・・あぁ・・っ」
気分を高めようと、ワザと切ない声を上げるも、中途半端に勃起したそれが
開放される兆しは見られない。決まり手といえる快感が得られないのだ。
記憶の中にある自分や他の人質達は皆辛そうであり、しかし確実に快感の海に溺れていた。
何故だろう、あの時は怖くて苦しくて仕方が無かったのに、
今ではあの世界は、自分に絶えず快感を与えてくれる夢の世界だったように思える。
例えば、誰かの尻の穴の中。誰かの口内、ぬめっとして、ざらついた舌の感触。
あの感覚を思い出すと、雄は段々と頭を持ち上げる。
それを見ていると、ヒロシの頭は妙に冷静になり、頭の中にあるあの情景がより鮮明になる。
「僕はおかしくなってしまったんだろうか・・・・」
ふと、先ほどまであの刑事と繋がっていた、携帯電話が目に止まった。
しばらくぼうっと見つめてから、おもむろにリダイアル画面を開くと
一件目には名前の表記されていない番号が写し出される。
ヒロシの携帯電話には登録されていない・・・あの刑事のものだった。
――― もし何か困った事があったら、いつでもこの電話に ―――
「あ・・・」
彼なら。
彼ならもしかすると、なんとかしてくれるかもしれない。
まるで全ての責任が自分にあるように感じている彼ならば、
あの事件がトラウマになって、自身じゃ処理できなくなってしまった可哀想な少年に
嫌でも付き合ってくれるんじゃないだろうか。
普通の人間ならバカらしい考えかもしれないけれど
自分の身を危険に晒してまで、あの教室に入ってきた彼ならば。
事件時の彼を思い出す。
とんでもない物を挿入されてもひたすら黙って耐えていた彼の、
痛みが快感に変わったときの信じられないという表情は、
同姓なのに何故かたまらなく魅かれるものがあった。
ビデオカメラを持って、「犬の散歩」と称して外へ出て行くとき。
彼の背中は、僕の目に酷く魅力的に思えた。
まるで動物のような筋肉の動きの一つ一つを、この手で触れて感じてみたいとさえ思った。
これは恐らく恋とか、そういうものではないだろう。
ただ彼に触れてみたい。
彼を犯してみたい。
心じゃなくて、躯がそう望んでいるような。
「ふふ」
大丈夫
あの人は僕の言う事をきいてくれる
何故かはわからないけれど、確信できる
通話ボタンを押した。
何も知らない刑事さんは、1コール目で出てくれて
『もしもし。高浦ですがー・・・君?どうかしたのかい?』
僕は、いつもの「沼田ヒロシ」のように、
あくまでビクビク、おどおどと、話し始めるのだ。
「刑事さん・・ぼ、僕・・・変、なんです。」
2006.08.16 | Comments(0) | SS